大判例

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東京地方裁判所 昭和27年(ワ)1005号 判決

原告 太陽自動車株式会社

被告 安田火災海上保険株式会社

一、主  文

一、原告の請求を棄却する。

二、訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は、請求の趣旨として、被告は原告に対し金十五万円を之に対する昭和二十七年二月二十九日以降完済に至るまで年六分の利息と共に支払う事を要する。訴訟費用は被告の負担とする。との判決及び仮執行の宣言を求め、その請求の原因として、昭和二十五年十一月二十四日原告は被告との間に保険者を被告、被保険者を原告として、保険の目的を営業用乗用車二十二台、保険金額を三百三十万円(一台当り十五万円)、担保種類を賠償(車内乗客を含む)、保険期間を同日より昭和二十六年十一月二十四日午後四時とする自動車保険契約(以下本件保険契約と称する)を締結した。然る処、昭和二十六年七月十五日早暁原告使用人訴外原三郎が本件保険契約の目的に属する乗用車(警察番号七九五〇五号ダツトサン五十年型)に乗客として訴外梅岡由紀子を乗車せしめ、向島から板橋区に赴く途中、同日午前二時頃右訴外原は右自動車を豊島区西巣鴨都電新康申塚交叉点附近の安全地帯に衝突せしめ、右訴外梅岡はそのはづみで坐席から投出され前方ウインドガラス破片の為前額部に長さ五センチ深さ一センチ左頬部に長さ九センチ深さ三センチ及び長さ七センチ深さ三センチの合計三個所に負傷し合計十三針の縫合手術をした。そこで、右訴外梅岡から原告に対し損害賠償請求の調停が葛飾簡易裁判所に申立られ、原告は右訴外梅岡に対し右損害賠償金として金二十万円を支払つた。原被告間に於ては本件保険契約により前述の如く保険の目的に属する自動車の運転中の事故に直接起因して生じた他人の損害を原告が賠償したときは、金十五万円を限度として被告は原告の賠償による損害を填補する義務あるに拘らず之が履行をしないので、右保険金及び之に対する本件訴状送達の翌日たる昭和二十七年二月二十九日以降完済迄商法所定年六分の遅延損害金の支払を求むると述べた。<立証省略>

被告は主文同旨の判決を求め、答弁として、原告主張の如き保険契約締結の事実及び主張の日に主張の如き自動車事故発生の事実は認めるが、右事故発生の時刻は同日午前四時半頃であつた。尚、右自動車事故に基き訴外梅岡が原告主張の如き負傷を受けた事実は認めるが、原告が右訴外梅岡に対し損害賠償として其の主張の金員を支払つた事実は不知と述べ、抗弁として、本件保険契約の約款第四条第四号には保険の目的が法令又は取締規則に違反して使用又は運転せられた間に生じた損害について、又、同第三条第一号には保険契約者若くは保険の目的に関する使用人の悪意又は重大な過失に因る損害についてそれぞれ被告は免責される旨規定されているところ、原告は本件事故を惹起した運転手訴外原三郎を当時二昼夜勤務一昼夜休暇で勤務せしめていたが、事故当日はその前日午前九時から事故発生まで夜間継続四時間以上の睡眠を与えずして就労せしめたため右訴外原は疲労と睡眠不足の結果仮睡して本件事故を惹起したもので、原告の損害は原告が労働基準法施行規則第二十六条第二項に違反した間に生じた損害であり、又、右訴外原の所為は道路交通取締法第七条第二項第三号に所謂正常な運転が出来ない虞があるに拘らず自動車を運転した時に該当するから本件損害は同取締規則に違反した間の損害で、何れも右約款第四条第四号に該当するし、又、同時に保険契約者たる原告の悪意又は重大な過失に起因する損害で同第三条第一号に該当するから被告は原告の本件損害を填補する義務はないと述べた。<立証省略>

三、理  由

一、原告主張の如き保険契約締結の事実及び右保険契約の目的に属する原告主張の自動車に関し原告主張の日、主張の如き事故が発生し之により訴外梅岡が負傷した事実並に右訴外梅岡の負傷が原告主張の如くである事は何れも当事者間に争がない。

成立に争のない甲第一号証によれば、原告が右訴外梅岡に対し右事故の損害賠償として金二十万円を支払つた事実を認める事が出来る。而して、右事故発生の時刻が昭和二十六年七月十五日午前四時頃であつた事は成立に争ない乙第二乃至第四号証によつて之を肯定する事が出来、証人原三郎の証言も亦之と矛盾しない。従つて此の点に関する被告の主張は正当である。

二、成立に争のない乙第一号証によれば本件保険契約に付被告主張の如き免責の各約款が存する事を認める事が出来、且つ運転手たる右訴外原三郎の勤務が二昼夜(四十八時間)勤務、一昼夜休暇であつた事は右乙第四号証によつて之を認める事が出来る。右勤務が原告の就業規則に基く事は証人落合正直、同川名清の各証言、及び右各証言によつて成立を認め得る甲第二号証によつて之を知る事が出来る。右の如き、勤務の態様が労働基準法に牴触するや否やは本件に於て争われて居ない。併し、右の如き場合に於て労働基準法施行規則第二十六条第二項の適用がある事は明らかである。右規定によれば一昼夜交替の勤務に於ては夜間継続四時間以上の睡眠を必要とする。従つて二昼夜勤務一昼夜休暇の本件に於ては一層有力な理由に於て夜間継続四時間以上の睡眠を必要とすると謂わなければならない。然るに原告が右訴外原を含めて一般に運転手に対して夜間継続して四時間以上の睡眠時間を与えて居なかつた事は証人原三郎、同落合正直、同川名清の各証言によつて明らかである。故に少くとも原告は右労働基準法施行規則第二十六条第二項に違反して其の従業員たる運転手を就業せしめて居たものに帰着し、此の故に原告は法令又は取締規則に違反し、且つ其の違反の下に本件保険の目的たる自動車を使用運転せしめた事となるのである。従つて本件は前示保険約款第四条第四号に該当し被告は原告の損害に対し免責さるべきものである。

三、よつて、被告の抗弁は理由があり、原告の本訴請求は失当であるから、訴訟費用の負担につき民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 安武東一郎)

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